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ダブリンの鐘つきカビ人間 2015版 パルコ劇場他


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2002年、2005年と公演された、ダブリンの鐘つきカビ人間。

最初の打ち合わせで演出のG2さんに言われた事は、過去のダブリンは忘れて欲しいという事。

そして再演にあたって、衣裳で助けて欲しいとも、言って頂きました。

自分にとって、この作品は、フランスから帰国して間もない頃、観た演劇の中で一番衝撃的に面白かった作品でした。

だからこそ、過去のダブリンを超える事は、自分の中でも無意識のうちに、芽生えていた感情です。

デザインするのは衣裳だけでは無く、ほとんど、人物、キャラクターそのものです。

きっと、カビ人間は、病気になる前の、格好良かった服装をそのまま着続けている。

きっと、おさえは、村娘風でありながらも、手先が器用で服の装飾など、お裁縫まで自分で出来る女の子。

など、それぞれのデザイン画を描きながら、役者その人と、その役を重ね合わせ、イメージを勝手にふくらませながら、

デザイン画に人物設定を、盛り込んでいきました。(勿論、演出のG2さんにその旨をプレゼンテーションしています)

 


カビ人間

この作品で、やはり一番悩んだのは、カビ人間の表現です。

 

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既存の生地では表現不可能だと判断し、生地を加工し作るところから始めました。
こういった生地制作からとりかかり、最終的にカビの加工を施しました。

生地サンプルは私が制作し、それを基に衣裳制作部が進めていきます。
カビ人間


ストーリーと共に、殺陣も素晴らしいこの作品。

 

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小西遼生くんには、暑い思いをさせてしまいましたが、重厚感と勇ましさを出す為、あのようなスタイルになりまして、少しだけ申し訳ないなと思っております。(少しだけ。)

お気づきになられた方はいないと思いますが…..戦士の鎧には通気口がついていたりします。

 

この、紋章のような大き目なボタン。

ここに「通気口」があります。これがマントに隠れる背中部分にもついています。


毎公演ごとに変化する掛け合いも見どころの、マギーさんと後藤ひろひとさん扮する侍従長と王様。

 

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やはり王様には病気に掛かる前の威厳がある装いでいてほしかったし

マギーさんは侍従長らしく規律ある感じでいて欲しいという想いから、このようなデザインになりました。

マギーさんの帽子の羽根の裏には、ピアノ線を這わせて羽根を立たせています。


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シスター篠井英介さんの生地は、以前にツイッターでも書いたように、夏の時点で国内の金糸の資材在庫が底をつき追加での発注のきかない生地でした。

シスターに使われるのを待ってくれていたかのように、必要分を奇跡的に入手する事ができた生地です。

市長吉野圭吾さんの衣裳は帽子やブーツに到るまで御本人とも細かく相談させて頂き、デザイン画では白かった袖口、衿元など全身を黒で統一し、今のダークさを出すことが出来ました。

演者からのフィードバックを貰うことによって、紙の上で一度完成したデザイン案は、生きたデザインへと昇華します。


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じじい役の村井國夫さんは、着物のように繋がった紺色のインナーと、その上に羽織を着て頂いています。

当初は、最後まで羽織を着た状態だったのですが、ラストの方で、民衆をなだめる為に出てくるシーンで、

村井さん御本人からせっかく着物を用意してくれているから、このシーンは羽織を脱いで中に着ている物を見せたいと御提案頂きました。

細かなところまで気を配ってくださり、用意した人の気持ちまで考慮して下さるお気持ちに大変に感動いたしました。


 

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おさえ(村の少女)

呪いで、思った事と反対の事を言ってしまう病にかかった少女。

演技初挑戦の上西星来さんを衣裳で少しでも助けてあげたいと思いデザインしました。

単に時代考証された、可愛い西洋のドレスではなく、ファンタジーの世界らしく、呪われた様を表現するため、濃い赤にレースを染め、血を表現したり、カビ人間同様に生地の加工を施しました。

 

おさえ

 

カビ人間と、おさえが可愛らしく映るほど、ふたりの可愛そうな境遇を伝えられると思いました。

 

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ダブリンの鐘つきカビ人間2015年版は、私も感動するほどに、お客様からも、出演者からも、

衣裳に対してのお褒めの言葉やメッセージを沢山頂きました。

これほどまでに衣裳に着目してくださり、本当にありがとうございます。

 

しかしながら、当然私ひとりのチカラでは具現化することは不可能です。

質の高いものづくりの裏には、表に名前の出ることのない、人の知恵と時間と労力が支えているという事を、時々で良いので、思いだして頂きたいのです。

 

 

御覧頂いた、お客様、共に作品を作れた出演者、及び、

制作、プロデューサー、他セクションスタッフ皆様。

素晴らしい作品に出会えた事、心から感謝いたします。

 

2015-12月  Costume Design  KITASAKO HIDEAKI